かわや(旧よろずや)のブログ

好きな乃木坂、映画、漫画などについて語ります。

中西アルノさん、いろいろ~その壱 Actually...

去年、鳴り物入りで乃木坂に入ってきた5期生、その中でも中西アルノさんの存在はすごく大きくて、一番衝撃的な出来事ではないかと個人的に思っています。

それで、今回は第一弾として、それから彼女がセンターを務めた29枚目シングル『Actually...』について触れたいと思います。

 

『Actually...』に見る乃木坂の本気度

29thシングル『Actually...』が発売されて一年以上経ちましたが、この曲の評価は真っ二つに割れているようですね。

乃木坂が変わろうとしていると好意的に受け止める声もありますが、曲の振りが中西アルノさんとそのバックダンサーみたいになっているというような批判的な声もありますね。

ただ、MVを観ていると、そういう賛否両論が沸き起こるのは承知の上、というように見えます。

 

素人目にも曲調、歌詞、ダンスが攻めている感じですね。

MVは、曲のパートとドラマのパートに分かれています。ドラマのパートは約20分間。観る側に緊張感を強いる見応えのあるドラマになっています。

今回、改めて観なおしたんですが、結構しんどかったです。

 

曲、歌詞、ダンスにも力が入っていることはわかりますが、具体的に何がよいのかとか、注目点なのかとかはわからないので、とりあえずMVのドラマパートについて語ります。

 

正直、いまさらMVのことを語っても、あんまり得るものはないかなという感じはあったりします。

誰が見ても「乃木坂は変わるからね」と言っているのは明白にわかるでしょうし、簡単にまとめるとそれ以上のことは言っていないように見えますし。

しかし、日本映画界でも重鎮的な存在である黒沢清監督を起用したところにも、乃木坂の本気度が伝わります。

まあ、中西アルノさん自身に深く切り込むことにはならないでしょうが、彼女に何が期待されているのかが少し語られている気がするので、ゆるーくMVの感想など書いていきたいと思います。

 

ドラマパートをざっくりとまとめると(敬称略)、変わろうとする力(トランジスタシス)=中西アルノ現状を維持しようとする力(ホメオスタシス)=山下美月その中間に位置する人=齋藤飛鳥を軸に話が展開していくという構成になっています。

人間の中では、常にトランジスタシスとホメオスタシスがせめぎ合っているという。エヴァンゲリオンで金髪のねえちゃんが喋っていた気がする。

三人の服装を並べて見ると、中西アルノさんと山下美月さんの服がペアになっていることがわかります。これは、この二人が対になる存在、表裏一体の存在であることを暗示しているように思います。

下の画像の左側が山下美月さん、右側が中西アルノさんです(後ろに映っているのは斎藤飛鳥さん)。


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29thシングル『Actually...』収録MVより

 

この二人が飛鳥さんを懐柔して自分の勢力に取り込もうとするのですが、結果的に飛鳥さんはアルノさんの側に付くことを拒否し、しかし変化を受け入れるという決断をします。

 

粗筋をざっとまとめると、こんな感じです。

  • 新しく研究生として加入した中西アルノが乃木坂を壊してしまうのではないかと危機感を感じた山下美月さんが、中西アルノさんを騙して古いスタジオに閉じ込めてしまう。
  • しかし、すでに一日以上閉じ込めていて罪悪感に駆られた山下美月さんは、そのことを通りがかりの齋藤飛鳥さんに告白。
  • 齋藤飛鳥さんは安否を確認するためにスタジオに行き、中西アルノさんの無事を確認。
  • スタジオの中で齋藤飛鳥さんと中西アルノさんが会話し、齋藤飛鳥さんも中西アルノさんが危険な存在と認識する。
  • 齋藤飛鳥さんは、スタジオを出て山下美月さんにアルノさんの無事を報告。そして、中西アルノさんが起こそうとしている変化から逃れられないと打ち明け、それを受け入れようと山下美月さんを説得する。
  • 中西アルノさん、何かにとりつかれたように、建築中のビルのてっぺんによじ登る。

 

それでは、シーンを個別に見ていきたいと思います。

冒頭のシーン。


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29thシングル『Actually...』収録MVより

 

点々と部屋の電気が点いたビル群。

これ、夕焼けのビルにも見えますが、おそらく早朝なんじゃないかと思います。

もし、映像の時間軸通りに物語が進んだと仮定すると、時期は冬(中西アルノさんがコートとマフラーをしているので真冬とわかる)で、日が沈むのが早いはずですから、最後のアルノさんがビルをよじ登るシーンは、すでに暗い状態になっていないとおかしいと思います。

しかし、よじ登るシーンで明かりがさしているので、夕暮れ時ではなく、早朝と見た方が自然ですね。

そして、この時間帯になっても、乃木坂のメンバーたちがまだ振りの練習をしているということは、今回の振りの難易度が高くて、練習にすごく時間がかかっているという意味かもしれません。

乃木坂のメンバーが出てくるのは、これが最初で最後。あとは斎藤飛鳥さん、山下美月さん、中西アルノさんの三人だけでストーリーは進みます。

 

練習を覗きに来た山下美月さん、その中に中西アルノさんの姿がなく、顔面蒼白になります。

 

そういえば、齋藤飛鳥さんと山下美月さんの位置づけがよくわからないんですが、練習していないところを見ると現役メンバーではないようです。あとでアルノさんが飛鳥さんを憧れの存在だった旨の発言をしていることから、飛鳥さんは今は引退して運営側のスタッフとして働いているのかもしれません。

劇中、彼女たちの立場がはっきりとわかるようなものは出てきません。

 

山下美月さん、通りかかった先輩の斎藤飛鳥さんを「飛鳥」と呼び捨てで呼び止めます。

別に美月さんが出世したから呼び捨てにしたとか、もはや飛鳥さんをいじるだけでは飽き足らず完全に見下しているとか、そういう話ではなくて、単に乃木坂を舞台にしているけど、乃木坂のリアルな話じゃないからね、虚実ないまぜだからね、という作り手からのメッセージでしょう。

 

話を戻します。

ここで、山下美月さんが中西アルノさんを危険人物として見ていて、今は使われなくなった古いスタジオに閉じ込めたことを告白します。ドアの前にワゴンを置いて出てこれなくするという、かなり悪質なことやっています。

ここで不自然なのは、自分がやったことの悔恨よりも、自分のやったことの正当性を飛鳥さんに一生懸命主張していることです。

それを裏付けるかのように、乃木坂のメンバーはアルノさんの不在を気にしていません。普通だったら騒ぎになりますよね。つまり、彼女は美月さんだけでなく、メンバー全員から(あるいはスタッフも含めて)その存在を煙たがられていて、孤立していることになります。

美月さんは「中西アルノをてなづけようとした」と発言しているので、一応、アルノさんを取り込むことを考えたが、それを断念し(おそらく自分の手には負えないと思った)、閉じ込めたうえで、飛鳥さんを自分の側に巻き込み、アルノさんに対処したもらう、というのが美月さんが描いたシナリオのようです。

 

飛鳥さん、ドアを塞いでいるワゴンをどかし、古いスタジオの中に入ります。

部屋の中を歩く飛鳥さんが、スモークがかかったようなぼやっとした映り方をしているのですが、これ多分、ガラス越しに映しているから、こうなっているようですね。

後の方の場面でわかるのですが、このスタジオ、ガラスで部屋、仕切られていますね。

 

中西アルノさん、画面の下の方からぬうーっと起き上がるんですが、この起き上がり方、完全にホラーの演出ですね。


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29thシングル『Actually...』収録MVより

 

普通の状態だったら取り乱してもおかしくないのに、アルノさん、妙に落ち着いています。それに、急に飛鳥さんを憧れの存在として持ち上げ出すのも変ですね。

飛鳥さんがアルノさんをスタジオから出るよう促しても、彼女、いろんなことを言い出して、なかなか出ようとしません。このスタジオの中で恐怖していたと言っていたので、さっさと出ていきそうなものなのですが。

どうやらアルノさん、一対一で話せるこのスタジオの中で、飛鳥さんを丸め込もうという作戦らしいです。

私はどちらかと言うと、大勢の中にいるときこそ、ひとりぼっちを感じるタイプです。齋藤さんもそうでしょ?

これは、リアルな話ですね。他人との間に距離を取り、他人との間に厚い壁を作るという点では、リアルに飛鳥さんもアルノさんもよく似ていますね。

飛鳥さんは「私はひとりぼっちじゃありません」と否定します。そして、アルノさんの真正面に椅子を置き、向かい合います。

アルノさんにみんなと歩調を合わせるように諭します。まあ、そりゃ、そうでしょう。乃木坂の中で浮いてしまっているわけですから。

(アルさん)齋藤さんと私の中にはきっと同じものが流れているんです。
(飛鳥さん)同じじゃない。同じなわけないでしょ。あなたと私は。
(アルさん)そうですか。残念です。

これで二人は決別、齋藤さんはアルノさんとは与しないと宣言します。

ここでアルノさんがくじけると思いきや、飛鳥さんに宣戦布告します。

それまで、アルノさんの顔は斜め下の角度から映っていて、薄ら笑いを浮かべていましたが、ここでカメラの角度が変わり、アルノさんの顔が真正面から映ります。つまり、これから言うことは本音ということですね。

どんな孤独にも増して、この楽しさこそが、私がここにいる理由なんだって、今はっきり理解できました。

「みんなが味方になってくれなくても、自分のやるべきことをやる」という宣言、つまりアルノさんの宣戦布告です。

これは、乃木坂の内外から批判を受けるのを承知で、新しい路線でやっていくんだという乃木坂運営サイドの決意表明ともとれます。

アルノさんの宣戦布告を聞いて衝撃を受けた飛鳥さん、椅子から立てなくなってしまいます。

アルノさんはそんな飛鳥さんをよそに部屋を出ますが、部屋を出た後、ワゴンを引きずる音がします。閉じ込められたと思った飛鳥さんは大慌てで部屋を出ようとしますが、ドアは開きます。

これは、自分が故意に閉じ込められたことを(おそらく美月さんが閉じ込めたことも)アルノさんは知っていたということですね。

 

この後、カメラの視点が、誰もいない階段を下から上の方へなぞるように移動していきます。


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29thシングル『Actually...』収録MVより

 

誰も階段上っていないのに、わざわざこんなシーンを入れたということは、おそらくアルノさんはその道筋で階段を上がっていることを暗示しているように思います。

つまり、飛鳥さんの帰りを座って待っていた美月さんは、アルノさんと廊下ですれ違ったということになります。

この二人が一緒に映るのを極力避けているようですね。互いに打ち消し合う力だからかな。よくわかりませんけど。

 

その後、飛鳥さんは美月さんの元に戻り、顛末を報告します。そして、乃木坂が変わってしまうことを受け入れざるを得ないことも。

それを聞いて美月さんは、「5」(階数)と書かれた数字の下に移動します。これが何を意味しているかは明白ですね。

 

飛鳥さんに抱えられるようにして歩く美月さんと、反対方向にアルノさんが通り過ぎていきます。互いに一瞥もくれません。

その後、アルノさん、ダンスのレッスン場があるビルから出て、何かに取りつかれように、建設中のビルをよじ登っていきます。

まあ、仮にこのビルをアルノタワーと呼ぶことにしましょう。今はまだ他のビルに比べて低いアルノタワーだが、いずれ大きくなって追い抜いてやる、みたいな意気込みを表しているように見えます。


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29thシングル『Actually...』収録MVより

という感じです。

ホラーテイストの入った見応えのあるドラマです。

 

それで、結局、アルノさんがどんな変化を起こすのかは、曲のところを刮目して自分で観ろということらしいですね。

曲もダンスもMVを観ての通り、アーティスティックな路線に振っちゃっています。

30枚目以降、いつもの乃木坂路線に戻りましたが、また何らかの形でアーティスティック路線は復活するんじゃないかなと思います。

なにしろ、中西アルノさんを含む5期生年長組の三人(通称、焼肉三姉妹)は、それぞれ一芸に秀でた芸術家(?)三人組ですからね。

彼女たちが加入したのは、そっち方面の期待値が大きいんじゃないかなと思います。それで、彼女たちが本領発揮する機会がこれから少しずつ増えていくんじゃないかなと。



中西アルノさんは乃木坂史上最高の歌姫

自分の中では中西アルノさんって「乃木坂史上最高の歌姫」なんです。

もちろん、生田絵梨花さんを筆頭に、歌のうまい人を何人も乃木坂が輩出しているのを知っています。

けれども、心の琴線にじかに触れるような歌い方をする人は、自分が知る限り初めてじゃないかなと思います。

 

おそらく、感性がすごく豊かな人なんでしょう。

友達が少なくて一人でいることが多いとか、爬虫類をペットにするなど変わった趣味を持っているなど、普通の人とは違う、典型的な表現者タイプのように見えます。独特の陰を持っているし、感受性も強い人なんでしょう。

こういう人って、人の善意も悪意も、普通の人の倍以上に強く感じてしまうのではないかと思います。

 

表現者タイプっていう言い方をしたのは、単なる歌姫に終わらない素材なんじゃないかと勝手に思っているんです。

なんか宇多田ヒカルさんとかとタイプ似ているんじゃないかなと。

ワードセンスが非常に優れているので作詞とかやってほしいし、はては作曲まで手掛けてくれないかなと個人的に期待しています。

もちろん、秋元康さんの作詞をとやかく言う気なぞ毛頭ありません。ただ、リアルな女性の感性って女性にしか表現できないので、そういうのを彼女にやってもらったら面白いんじゃないかという話です。

少年漫画に出てくる女性が、女性から見るとリアリティがなく、少女漫画に出てくる男性が、男性から見ると「こんな奴はいない」と見えるように、どうしても男女で感覚がだいぶ違うんですよね。

だから、そういう自作自演がアルバムに入ってたら面白いんじゃないかなあという話です。

そうなったら本当に乃木坂変わっちゃいますよね。単なるアイドルの枠にはまらないという。

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